誰しも家族に迷惑をかけずに老いることを考えてはいるもののなかなか行動にかかれないものです。
原因の一つは何歳から要介護認定者の仲間入りをして何歳で死ぬのか言うことが見えていないからですね。
この記事は官公庁や政府からのリリース情報から「高齢者はいつまでに生前整理をすべきか?」をまとめたものです。
その最終リミットは何歳なのかを探ってみました。
目安となるのは2種の健康寿命です。
現在日本では二通りの健康寿命の概念と計算結果が報告されています。
この二通りの健康寿命は10才以上もの差があります。
目次
二通りの健康寿命とは
二通りの健康寿命とは平成24年9月に報告された「健康寿命の算定方法の指針」の中で紹介されています。
現在の日本で最も流布されている健康寿命は
厚生労働省が主導する健康日本21の中で定義されている健康寿命です。
その指標は「日常生活に制限のない期間の平均」というものです。
算定となる元データは国民生活基礎調査の健康票からとられています。
もう一つの健康寿命は「健康寿命の算定方法の指針」の中で計算されたものです。
その指標は「日常生活動作が自立している期間の平均」というものです。
算定となる元データは介護保険の要介護度認定データからとられています。
介護保険の要介護度の要介護2~5を介護が必要な自立していない不健康な状態と定義しています。
こちらの健康寿命の方が
「高齢者は何歳から要介護認定者の仲間入りをするのか?」
という問いに対して近い気がしませんか?
健康概念と元データが相違する二つの健康寿命の比較
平成2010年度の「日常生活に制限のない期間の平均」と「日常生活動作が自立している期間の平均」の健康寿命の相違を比較してみましょう。
データ抽出資料は平成24年9月の「健康寿命算定方法の指針」です。
この指針は厚生労働省の補助金を受けて大学の公衆衛生の研究者により作成されています。
この指針での2010年度の健康寿命の計算結果は
★日常生活に制限のない期間の平均
男性 平均寿命 79.6才 健康寿命(日常生活に制限のない期間)70.4才
女性 平均寿命 86.4才 健康寿命(日常生活に制限のない期間)73.6才
★日常生活動作が自立している期間の平均
男性 平均寿命 83.9才 健康寿命(介護認定2までの期間)82.2才
女性 平均寿命 89才 健康寿命(介護認定2までの期間)85.5才
同じ健康寿命でも驚くほど相違していますね。
「日常生活に制限のない期間の平均」とは国民生活基礎調査の中での設問に答える自己申告が元データです。
あなたは現在、健康上の問題で日常生活に何か影響がありますか? YES NO
その制限の内容とは
1.日常生活動作(起床、衣服着脱、食事、入浴など)
2.外出(時間や作業量などが制限される)
3.仕事、家事、学業(時間や作業などが制限される)
4.運動
5.その他
「日常生活に制限のない期間の平均」は高齢者の自己申告のみというのは問題がありそうです。
高齢者の場合は本人が気づいていないからトラブルになるの事が多々ありますから。
それに「日常生活動作が自立している期間」の定義に比較するとかなり緩いです。
基準が緩いのにネットには健康寿命すぎると寝たきりなんて掲載しているサイトがかなりありますがあり得ないです。
近所の70才過ぎた老人で寝たきりの人なんていませんから。
一方「日常生活動作が自立している期間」とは要介護2の一つ手前の要介護1までを許容しています。
要介護1の状態とは
1.見だしなみや居室の掃除などの身の回りの世話に何らかの介助(見守りや手助け)を必要とする。
2.立ち上がりや片足での立位保持などの複雑な動作に何らかの支えを必要とする。
3.歩行や両足での立位保持などの移動の動作に何らかの支えを必要とすることがある。
4.排泄や食事はほとんど自分ひとりでできる。
5.問題行動や理解低下がみられることがある
といったものです。
家族にとって一番の問題は頭脳の低下です。
1.記憶力が低下して同じ質問を何度もする。
2.小銭の支払いが面倒になりいつもおつりをもらうので財布が小銭だらけなる。
3.財布や鍵やメガネをしょっちゅう紛失して探し回る。
4.火にかけた鍋を忘れてしまう。
5.電話の勧誘詐欺に引っかかる。
このような要介護1でも
頭脳の劣化が入ると家族は目がはなせないのです。
それでも家族と一緒なら海外旅行もできますし、人生を謳歌できるギリギリの状態といえましょう。
このように2種の健康寿命を比較すると「高齢者はいつまでに生前整理すべきか?」という問いに対する答えは
「日常生活に制限のない期間の平均」と 「日常生活動作が自立している期間」の間にありそうです。
人間の頭脳は老齢化とともに自分がどう思おうと確実に劣化しています。
記憶力の低下、老眼、聴力の低下、体力の劣化などの影響もあるでしょう。
高齢者は劣化を遅らせるためにスポーツしたりカラオケしたり趣味の仲間に入ったりして頑張っているわけです。
高齢者の頭脳の劣化度を示す衝撃的なデータが平成25年10月8日に公表されました。
人間頭脳力の衝撃の劣化データが出た
人間頭脳力の衝撃の劣化データとはOECD「国際成人力調査」です。
その内容は人間の頭脳は早い段階で高校生の頭脳を下回るというものです。
1.読解力と年齢の関係では50才にして16才の高校生を下回っている。
2.数学的思考力と年齢との関係では60才にして16才の高校生を下回っている。
3.ITを活用した問題解決能力と年齢との関係では45才にして16才の高校生を下回っている。
老いては子に従えというのは、15万7000人を対象とした国際成人力調査によってもある意味正しいことが証明されたわけです。
ある意味というのは、経験と知恵に基づく対応力や人の管理能力ではまだまだ高齢者にかなわないからです。
それでも政治家が65才を過ぎても現役というのはやめるべきでしょう。
健康寿命で最も恐ろしいのは頭脳の劣化であり、頭脳の能力は年齢とともに確実に衰えているのです。
要介護認定者数が急激に増える年齢は
平成28年4月末現在で65才以上の高齢者は3467万人となりこのうち要介護認定者数は622万人になりました。
要介護認定者数のデータを眺めてみると面白いことに気が付きます。
ある年齢を境に要介護認定者数が急激に増えていることです。
年齢別に要介護認定された人数分布はどうなっているのでしょうか。
平成28年度の介護保険事業状況報告(全国計)によれば
65~70才で要介護3~5に認定された男性は54,031人、女性は41,143人、
70才~75才男性では71,867人、女性66,730人
75才~80才男性では108,947人女性135,995人 となりこの年齢で急激に増えます。
65~70才で要支援1~要介護2に認定された男性は102,925人、女性95,727人
70才~75才では男性137,070人、女性 175,970人
75才~80才では男性218,752人、女性387,230人となりこの年齢で急激に増えてきます。
要支援1~要介護5認定された75才までの合計は男性365,893人、女性379,570人 総計745,463人(高齢者の2.1%)
75才までに65才以上の高齢者人口3459万人のうちの2.1%相当の人が支援又は介護を受けていることになります。
これが80才までとなると要介護認定者数は男性693,592人、女性902,795人で総数が1,596,387人となり、4.6%に該当します。
注目すべきは75才を境に要介護認定者数が急激に増えていることです。
ということはその前段階の70代前半から介護度が進んでいるということです。
隠れ要介護認定者がいるから実態はもっと多い
隠れ要介護認定者が多数いるというのは要介護認定は申請しなければ認定されないからです。
要介護認定とは、介護保険サービスの利用希望者に対して「どのような介護が、どの程度必要か」を判定するためのものです。
介護保険サービスの利用を考えるのであれば、まず申請による要介護認定を受けて、「要介護」または「要支援」の判定をもらう必要があります。
申請しなければ要介護認定はされないし、介護保健のサービスを受けることもできません。
たとえば相続税を払うような高齢者が平成28年度で10万6000人ほどいます。
被相続人一人当たり1億4000万円も相続税を払うような金持ちです。
この人たちがわざわざ要介護認定を申請して特養に入居するでしょうか。
お手伝いを雇うとか、手厚い看護のサービス付き高齢者住宅に入居するでしょう。
毎年10万人相続税を払う人がいるということは男性65歳から83.9歳まで通すと190万人以上の相続税納入予備軍≒隠れ要介護認定者が存在するということです。
国税庁の「申告所得税標本調査結果(平成28年分調査)」によると納税額1千万円以上の人はおよそ83万人ということになります。
納税額全体の80%以上がこの13%の人たちによってまかなわれているのです。
となると日本時の平均所得や貯金額はこの人たちにより大幅にアップされている数字であることになります。
ちなみに所得税額1000万円の人の所得金額は計算すると2779.6万円の年間所得になります。
高齢者の中には190万人以上の相続税納入予備軍が存在するという数字はこのことからも納得できますね。
それと平成28(2016)年における60歳以上の自殺者数は8,871人、孤独死した人が4600人がいます。
現在1人暮らしの高齢者は700万人近くいます。
この中には社会とのかかわりが希薄な人が多数いるといわれています。
このような人たちが要介護認定を受けるでしょうか?
このように要介護認定を受けている人たちの数字の背後には
かくれ介護認定者が多数潜んでいると思われます。おそらくこの数字(要介護認定者数)は数倍になるでしょう。
何を言いたのかというと「日常生活動作が自立している期間」を謳歌している人は統計での算出結果よりもなりかなり少ないだろうということです。
高齢者の運転免許が75才以上から認知機能検査が入る
2017年3月12日に道路交通法が改正されました。
高齢者の運転による交通事故の多発を受けて、運転免許証の更新時に「75歳以上」の場合は、「認知機能検査」を受け、認知機能が低下しているかどうかが判断されます。
今回の改正を受けて警視庁では、「75歳以上で免許更新を希望する」場合は、事前に講習予備検査の受検を義務付けています。
「講習予備検査」は、「時間の見当識」「手がかり再生」「時計描画」の3つの検査を行なうことで、高齢者に自分の自分の判断力や記憶力の状態を知らせることが目的です。
車の運転についても75才が一つのターニングポイントとなったわけです。
高齢者はいつまでに生前整理すべきか?まとめ
75才までに、65才以上の高齢者人口3459万人の2.1%が支援又は介護を受けているというのが表の数字とすれば
隠れ要介護認定者は数倍になるでしょう。
高齢者の知恵や経験は優れていますが、頭脳の働きは劣化していることはOECDの調査が示しています。
数学的思考力と年齢との関係では60才にして16才の高校生を下回っているのです。
このことからどんなに遅くても65才~70才の間に要介護認定者の仲間入りをする可能性があると覚悟を決めて
老後の人生設計をすべきでしょう。
それ以後では頭脳の劣化≒認知機能がますます劣化する可能性があるからです。
この予後の人生設計は生前整理から始めるべきです。
死後に家族や遺族や保証人に迷惑をかけないように、金持ちは財産分与の遺言書を残したり、生前贈与したり
自分の死後にトラブルが起きないように、無駄な税金を払わないように、遺品をごみにしないためには
生前整理の計画の立案と実行する年月が必要です。
生前整理や遺品整理を業としている会社と打合せしてみる事から始めると弾みがつくでしょう。